HANSON ISLAND
CANADA

Rカナダ・ハンソン島02●オルカの歌声を訪ねる9日間
 2002年 7/27(土)- 8/4(日)

Sound Bum/レギュラー企画
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レポート●川崎義博さん

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テレグラフコープ
散歩してみると海のにおいに包まれ、のどかな感じが残る小さな港である













ハンソン島オルカラボのゲストハウス
居間兼食堂は明るくて居心地がよい

テレグラフコープからオルカウォッチングへ

住んでいる人はたった4人という木材の積みだし港、テレグラフコープの話は聞いていたが、着いてみると小さなボートが多く係留され、デッキ状に海に張り出した建物などが想像以上にあった。今はレストラン、お土産店が増えており、オルカウォチングの拠点として賑わっている。

朝9時出発のオルカウォチングのボートへ乗った。客は約30名。湾の外に出てしばらくオルカを探す。小さな島が多く、潮流が入り組んでいるその潮目をイルカが数頭ゆっくり泳いでいる。そしてその向こうに、魚のナブラがたち、かもめや白頭ワシが舞っている。30分ほど経った頃、数頭のオルカがゆっくりと島の磯伝いに遊びながらやってくる。時折ブローが白く吹きあがり、黒と白のからだが波間に見えかくれしている。スパイホイップも時折見られる。のんびりと遊ぶオルカのポッドの観察を堪能。以外と簡単に見れたが、勿論これは船長の経験と各船を結ぶオープンチャンネルの無線のおかげである。

オルカとのファーストコンタクト後はコーヒータイムに。船外は以外に寒いので、みんな用意された上下のカッパを着込み、コーヒーを飲みながらぼんやり海を見ている。何度かの接近後、船が止まると、今度は水中マイクをおろし、オルカの声を聞かせてくれる。そして最後には同乗のネイチャーガイドのオルカに関するレクチャーがある。オルカも見れたし、初歩知識も得られ、満足の行く船上の3時間であった。

ハンソン島に到着

テレグラフコープからポールスポング博士の船でハンソン島へ。 到着後、女性陣はゲストハウス内にベッドを確保。男性陣はゲストハウス脇の2人用テントに分散。

ゲストハウスは博士と友人の大工のカートさんが建てたのだが、居間兼食堂は明るくて居心地がよい。ここでのんびりとお茶を飲みながら海を見ていると心がなごんでくる。台所は意外に調理器具がそろっており、いろいろ料理が作れそう。トイレは野外に設置してあるが、ちゃんと男性用、女性用で分かれており、清潔に掃除されている。水は自然水の利用なので、ふんだんには使用は出来ないが、サウナ、シャワー室も別の建物にあり、これくらいの人数は充分まかなえるシステムになっている。

夕食は博士の奥さんのヘレナさんの手作りで、これがなかなかにおいしい。釣りに成功すれば、新鮮なサーモン料理が食べれる。パンも勿論自家製。博士の住むロッジの居間で博士たち、隣人のカートさん、ボランティアの人達も加わりみなで食事。ワインにビール、手作りの食事に話し声、心温まる一時であった。


 オルカのブロー/1'15

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見晴らしの良い裏山からのぞむ
オルカラボ












島の森は思ったより深く緑が濃い
天気の良い日に皆で
散策に出かけるのも楽しみのひとつ

オルカラボとオルカタイム

オルカの研究をやっているオルカラボでは、ボランティアの人達が24時間体制でハイドロフォン(水中マイク)から聞こえて来る音に耳を澄ませている。オルカの声は各所に仕掛けられたハイドロフォンにより捉えられ、無線でラボに集まって来ている。どのマイクに声が入ってくるかで、オルカの位置がわかる。また、その鳴き声でどのオルカか判別できるらしい。

博士の奥さんで研究者でもあるヘレナさんとボランティアの日本人女性が特にこの能力にたけている。最初は難しいが聴いている内に何か会話をしている様子がわかってくる。実際のオルカの見分けは彼等の背鰭の形で確認しているが、この声を聴くシステムはかなりオルカの行動パターンを捕らえている。

ところでオルカタイムは、いつやってくるのかわからない。朝食を食べていると突然オルカタイムが始まったり、ディナータイムの後、シャワータイム、そして寝ようとすると再びオルカタイム。ここでは唯一オルカの到来がみんなの「時間」を決めている。

ボランティアの人たちは普段は自分たちで食事を作る。オルカが来すぎると、食事も睡眠もままならない。いくらオルカ好きでも「もうオルカみたくな〜い」となることもあるらしい。それぐらいタイミングがあえばオルカがたくさん見られる。

ハンソン島の森

ハンソン島の森は思ったより深く緑が濃い。苔に覆われた木がかなりあり、少し屋久島に似ている。ボランティアの人に案内されグランドマザーツリーと呼ばれている大きな杉の木へ。実はこの島でも大きな木はかなり切られてしまい、このグランドマザーツリーはかろうじて残ったこの島の象徴でもある。

さらに奥に少し入り、先住民族の残した痕跡を木に見る。これは、CMT=カルチャー・モディファイド・ツリーと呼ばれ、ネイティブインデアン達が立ち木から直接木が痛まない程度に皮をはいだり板を取った、そのあとが古い木に残っている。この島に住む学者がこのCMTを調査し、文化資産として保存を呼びかけ、この島を伐採の危機から誘ったという。そんな話しを聴きながら木を見つめているとさまざまな思いが沸いてくる。

自然がいっぱい残っていると思っているカナダだが、実は一方で森林伐採の危機にひんしている。休憩した場所で、高性能マイクを使用したワークショップを少し試みる。マイクを通じて遠くの音、小さな音を聞いていると、実は静かだと思った森も、様々な音に満ちているのがわかる。みんな交代でヘッドホーンの音に聞き入る。ここでみんな、カナダの森の自然の音を実感。
この島は海ばかりでなく森も面白そうである。小さな鹿もいるらしい。話によるとクマやオオカミも渡ってくるそうである。








Cracroft Point、通称CP
ここには水中カメラが
設置されており、その映像は
マイクロウェーブでアラートベイへ
送られ、そこからインターネットで
日本のサーバーに送られている





ラグーン
狭い水路を入ると浅瀬は小さな魚で一杯
何万匹いるのであろう。

CP

博士の船でオルカライブの為の基地、Cracroft Point 、通称CPへ。狭い岩場に機材設置の為の小屋があり、博士の娘さんが一人常駐している。博士が定期的に水や食料を運んでいる。岩場に作られた基地は狭いがとても居心地良く、海峡の三叉路に当たるので、様々な船が横行しているし、オルカ達が頻繁に訪れる場所なのであきることはない。むしろ音の日和見ポイントでもある。

ティータイムの後、マイクを使った簡単なワークショップ。海峡を通り過ぎる船を見つつ、みんな楽しそうに音を聞いている。ここを預かる博士の娘さんは実は一人がよいらしく、人が来ると居心地悪そうにしている。もっとも、この狭い場所では人がいる場所もあまりないし、ここが自分の責任において運営されているので当然ではある。ネットでオルカライブを見ている人はご存知かもしれないが、オルカが来るとネットを通じてお知らせが来る。それは実は彼女がその発信元なのだ。一人ぼっちの場所なのだけど、ネットを通じて人と繋がっている。それ以上に自然と一体になっている場所である。

秘密のラグーン

CPの訪問からの帰途、静かな所へ行こうと言う事で、博士の知るラグーンへ立ち寄った。狭い水路を入ると、浅瀬は小さな魚で一杯。何万匹いるのであろう。みんな黙って魚を見ている。これほどの魚の量を見たのは始めてだ。博士はボートのエンジンをきり、じっとしている。ボートは水流の流れるまま、博士がたまに棹差し、渓流のような浅瀬を通り抜けると、その先は大きな湖のようになっており外界からは隔絶されている。外を走る漁船の音も聞こえない。静寂の湖という言葉がぴったりである。みんな口を閉ざし、ただ、風の音、水の音を聞き入っている。

いったいどれだけの時間そこにいたのであろう。潮の流れが変わり、船は元来た方にまたゆっくりと動いている。実はこの場所は満潮時でないと出入りが出来ない。まさに奇跡とも言えるタイミングで私達の船は出入りした。エンジンもかけずに、潮の流れに乗って。船を出発させようとすると、今度は一匹のあざらしが現れる。水中から不思議そうにこちらを眺め、こちらが覗きこむと驚いたように逃げる。そして、又、寄ってきてこちらを見つめている。しばらくあざらしとの会話を楽しんだ後、水路から出たところで今度は白頭ワシのつがいが高い木に止まっているのを発見。

この夕暮時、一度にいろいろの物を体験し、しばし放心状態に。みんな言葉を交わすことなく、満足げに静かに走る船の上で遠くを見やっている。


 オルカのコール(水中マイク)/1'13

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オルカラボの前の海峡をいくオルカ達

ラボの夜

夜の寒さに震えながらじっと暗い水面を見つめている。まだ月は昇らない。昨晩は沖を何頭かがゆっくりと通りすぎた。その直後巨大なスターシップのような客船が通リ過ぎて行き、まるで夢を見ているような光景を見た。今日は来るかもしれないと知らされてから、随分と時間がたつ。まだ、来ないのかなと更に海を見つめ、耳を澄ましていると、突然聞こえて来た。あの、ゆっくりと吐くブローの音が海を伝って。

今日はオルカはラボのそばまできてジャンプ。すごい水音が響き渡る。そして、暗い海面にブローの音が再び聞こえる。なにか物語りの1幕を見ているようだ。みんな黙り込んで聞き入り、海を見つめている。いつのまにか月が昇りかすかに海に照らしている。

ブローの音がゆっくりと遠ざかって行く。オルカが去ったあともみんな興奮して眠れない。誰ともなく集まり飲みながらオルカの話。そして、夕方に見た幻のようなラグーンの話。いつまでも話は尽きない。ボランティアスタッフの一人が語ったある晩の話しを思い出す。ある夜、海を見下ろす高台で酒を飲んでいると、月が昇り、月明かりが海の上に一筋の光の道を作った。それを眺めていると、一匹のオルカがその光りの道に突然現れたという。そんなことも不思議ではなくなる、ハンソン島はそんな場所である。

博士の素顔

ツアーではスポング博士のレクチャーを1時間ほど設けてもらった。博士はゆっくりとオルカラボの歴史を語り、現在やろうとしていることを説明した。ゆっくりと一言づつ確認するような丁寧な話しぶりにみんな聞き入る。オルカへの愛情、それ以上のものが静かに感じられる。オルカと共に生きているそんな感じであろうか。

話しを聞いた後は質問。話が盛り上がってきた所で約束の1時間は過ぎディナータイム。博士は実に気配りのきく人で、普段食事の時も我々がリラックスできるようにいろいろ取り計らってくれる。今日はCPのポイントのメンテに行った折、ウニを我々の為に採取してきてくれた。実は最後のディナーなので、博士が日本人の好きなウニをわざわざ取ってくれたのだ。








ガスタウンの蒸気の時計。
スチームオルガン、
そんななつかしい感じの音である。

バンクーバーへ

9時半。博士のボートでテレグラフコープへ。荷物を車に積んだ後も博士は丁寧に一人づつと別れを惜しむ。テレグラフコープからはフェリーの予約の時間があったので、ひたすら走る。景色が次々と過ぎて行く。
キャンベルリバーで昼食休憩、フェリーが待つナナイモヘ。フェリーの予約は5時であったが、ラッキーにも4時の便に乗れることに。そう思っていたら、船が遅れて、結局5時の出船。まあ、人生そんなものだ。

船旅は大きなフェリーなのでまったく揺れず、快適。ただ、夏休みで人が多いので、予約は必用だし、船内はごった返している。でも、甲板に出ると人も少なく、遠くの雪山を見ながらのんびり寝転がっていた。高い山々がまじかに見えてくるとバンクーバーへ到着。

次の日は朝から自由時間。オプションのカヤックに行く人もいれば、ゆっくり散歩する人も。私はゆっくり寝た後、機材の手入れ。そして町へ音の散歩に行く。
待ち合わせ時間にカヤック組が満足した顔で登場。穏やかな内海でかなり気持ち良かったみたいだ。カナダの夏のひとときを楽しく過ごした。そんな顔をしている。

車が到着して市内観光へ。高台からバンクーバーを全体的に見ながらバンクーバー大学週辺へ。しかし、きれいな町だ。アメリカに比べると安全だし日本人向きだ。ひととおり町を見た後、グランビルアイランドへ。ここは、川岸に開けた市場のある場所だが、再開発でいろんな店ができ、ギャラリー、クラフトショップだけでなく、有名なデザインの学校、シアターもあり、劇団だけでも5つくらい活動しているそうだ。市場が活気があり楽しい。買物しつつ音も楽しむ。ストリートミュージシャンがいれかわり立ち代り演奏している。食事はグランビルアイランドの川岸のレストラン。夕暮の中、ここで醸造しているビールで乾杯。あとは、みなさん良く食べ、良く飲み、良くしゃべり。話題は尽きない。気がつくと10時をすぎ閉店時間であった。





グランドマザーツリーの前で

まとめ

全体にゆったりしたツアーで、要素がオルカのみでなく、いろいろあったので満足度の高い旅であった。音がキーなのだけれど、そのおかげでゆっくりと時が過ごせる。カナダの自然を楽しめると言う以上に自然の中での時間をいろいろ体験しながら過ごせる。
オルカと言う存在を通じて、何か地球と向き合うというか、自分とも向き合う旅でもある。そして、ポール・スポング博士という人と知り合いなり、語り合えたという思い。
まだまだこの旅の整理は出来そうにない。いろいろなことがつぎつぎと蘇ってくる。
しばし、録音してきたオルカのブロー音を聞きながら、あの夜のことを考えている。



サウンドバム●カナダ ハンソン島・オルカの歌声を訪ねる9日間
参加者:6名(男性2人、女性4人)
同行サウンド・ナビケーター●川崎義博
現地ドライバー・通訳ガイド●海老澤 彰
ツアー代:375,000円

2003年夏も同様のツアーを企画中です。
発表は4月頃の予定ですが、お問い合わせは まで
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