旅の報告49
マッターホルン登頂(2015年)
スタッフ・レポート
2015年の8月に、ワイルド・ナビゲーションの女性スタッフがマッターホルンに登頂した際のレポートです。今回はスイス人ガイドによるガイド登山ですが、前日に雪が積もった影響で少々手こずった末の登頂となったようです。
2015年8月3日、念願のマッターホルン(4478m)の頂に立ちました。
麓のツェルマットの村からも見える、天に突き刺さるかのように鋭利なヘルンリ稜は、覚悟していた以上に急峻なものでした。
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8月2日、登頂前日の午後、ツェルマットからロープウェーでシュヴァルツゼー(2,583m)へ。そこから2時間弱登って、標高3,260mのヘルンリヒュッテに着きました。
ヘルンリヒュッテは、マッターホルン・ヘルンリ稜の登山拠点となる山小屋です。
初登頂から150周年を記念して、今年7月1日にリニューアルオープンしたばかりです。
客室や各階のラウンジには真新しい木製の家具が。アルプスの山小屋なので、ベッドも勿論、一人分のスペースが確保されています。
全面ガラス張りのダイニングルームからは、明日登るヘルンリ稜を間近に見上げることができます。
夕食はビーフストロガノフ。スープとデザートも付いてコースになっていましたいました。町のレストランとそれほど違いはありません。明日は、これで頑張れる!
さて、登頂当日の8月3日は04:00起床で朝食。その後、まだ暗いうちからヘッドランプを点け、小屋を出るときからガイドさんとロープを結んで出発です。
泊まっていた人が皆、一斉にスタートして、そのほとんどが登頂後はヒュッテにもう1泊することなく最終のロープウェーで下山するので、時間が限られています。暗闇の中で、およそ10時間に及ぶ持久力&スピード勝負のクライミングが始まります。
(残念ながら、暗い時の写真はありません。)
ガイドさんが先行し、私が後に続きます。大きな動きで遠くを掴んで登るのではなく、近いところに手がかりや足の置き場を求めて登るようにと指示を受けました。
手がかりがほとんどない垂壁には頑丈なフィックスロープが設置されています。直径5㎝ほどもあり、ロープというよりしめ縄のようです。疲れてくると握りにくい太さなのですが、必死で掴んで這い上がります。
振り返ると、登ってきた稜線がはるか谷底へと続いていて、ヘルンリ小屋やシュバルツゼーのロープウェー駅までが見下ろせます。すぐ足元に見下ろせることで、いかに傾斜がキツイかがわかります。
ヘルンリ入山前日の8月1日に雪が降ったので、3,400mあたりから岩のくぼみには雪が溜まっており、ソルベイ避難小屋がある4,000mから上ではアイゼンを着けました。足を乗せると、さらさらと崩れて踏ん張りがきかない新雪に手こずりました。
「あと何百mあるのだろう?」と不安になった頃、金属製のマリア像が見えて、頂上に着きました。急傾斜に加えて新雪に苦労しただけに感慨もひとしお。ガイドさんとハグして喜びを分かち合いました。
マッターホルンの頂上は、私が踏んだ4,478mの他、数十m先にイタリア側ピークがあります。本当はそちらも踏みたかったのですが、そこに行くまでの雪の状態が悪いことと、下山時の雪質も心配なことから、諦めざるを得ませんでした。ガイドさんも「今いるところが最高地点だから。」と言ってくれました。
案の定、下る頃には雪が融けてきてシャーベット状になり、これはこれで悪い状態でした。これまで体験した中では積雪期の富士山9合目のような、後ろ向きクライムダウンではなく前を向いて下りられる、ギリギリの斜度に感じられました。
頂上直下は、下ろうとする人と登ってくる人が急傾斜の中ですれ違い、大変な混雑です。
下りはさらに傾斜を感じました。下りの方が事故が多い、というのも頷けます。
力を振り絞って下っても、ヘルンリ小屋の遠いこと遠いこと!