旅の報告(2016年4月)
ヨーロッパ・アルプス
憧れのオートルート踏破/シャモニー〜ツェルマット11日間
2016年の4月(4/1発)、ヨーロッパ・アルプスのツアースキー「オートルート」を山岳ガイド同行で踏破する11日間のツアーを催行しました。ガイドの菊池さんからのレポートです。
参加者の方からいただいたレポートは以下ですので、是非、こちらもご一読ください。
〇 憧れのオートルート踏破/憧れのオートルート踏破→
はじめに
フランスのシャモニーからスイス・ツェルマットへの「オートルート」は、 アルプスの最高峰モンブランの山麓から、マッターホルン山麓に至る山岳路。このルートを春のスキーシーズンに、山小屋をつないで山岳スキーで走破するのは山岳スキーヤーの憧れのひとつです。
氷河、山小屋、コルをつなげて滑り、そして登るスキーツアー。シールハイク&シールを背負いアイゼン&ピッケルでの登高シーンもある内容で、ツアー中の最高高度は約3,900 m。1日に8〜10時間の行程を歩き、滑れる体力、そして山岳装備なども要するルートになりますが、山岳スキーの魅力がつまった充実したツアースキーを満喫できる山旅となります。
今季2016年は、国際ガイドの石坂博文さんと私、菊池泰子でゲストの皆様をエスコート。無事に完走となりました。
オートルート初日/トラブルを乗り越えてスタート
羽田からの出発便が大幅にディレイ(遅延)して出発。乗り継ぎのドーハ空港(カタール)で予定便に乗り継げず足止め、翌日の便でようやくジュネーブ、そしてシャモニー入りというツアーのスタートとなりました。
スケジュールが1日ずれこんでしまい、山小屋の予約変更なども移動中にトライしましたが、この時期はハイシーズンで山小屋は満員。しかもゲストの預け荷物の一部が届かず、肝心のスキーをレンタルするなど出発準備にも時間がかかり、波乱のスタートとなりました。
結局、当初予定の初日のシャモニー〜グランモンテ〜トリアン小屋の行程を省略することにして、シャモニーで車をチャーター。ヴェルビエまで車で移動してゴンドラを乗り継ぎ、フラッフルリー小屋に入って、オートルート初日は終了。モンスーンによる南風の強い一日でしたが、心配されたゴンドラの運休もなく(私達が利用した後ゴンドラは停止。助かった〜)ゴンドラ終点からコルを2回抜け、小さな雰囲気のよいフラッフルリー小屋までは滑走しての到着でした。
当日の雪面コンディションは固めでしたがクトー(スキークランポン)がある程度入り、登高時はほぼスムーズ。滑走では少々ひっかかる雪質ではありましたが、初日からヨーロッパスキーのスケールの大きさを感じる滑走となりました。
オートルート2日日/フラッフルリー小屋(2,657 m)〜ディス小屋(2,928 m)
この日の行程はフラッフルリーからコルまで登り、ディス湖沿いをほぼトラバースする長い滑走&シール歩行の1日。標高差はそれほど無い1日ですが、ディス湖沿いのトラバースが終わるとディス小屋への登りとなります。
小屋までの最後の15分ほどは100 mほどの急な登りをジグで登ります。雪面も硬くゲストさんも少々緊張しておりましたが、無事に到着。ビールで乾杯です。
オートルート3日日/ディス小屋〜ビニエット小屋(3,160 m)
この日の行程はオートルートのハイライト、最高標高3,796 m(ピンダローラ)越えの行程。しかし、視界も無い悪天で、小屋に宿泊したいるほとんどのパーティはピンダローラ越えのルートは回避して、安全なエスケープルートで迂回。私達のグループも同様にエスケープとして、急なコルまではロープをつなぎ、ハシゴのステップを登りアローラ側のスキー場へと移動。視界不良ではありましたが雪も良く滑走は楽しめる斜面でした。
スキー場の中腹までは滑って一旦、休憩。ここからはヴィニエット小屋までの長〜いシール歩高で、標高差1,000 m以上の登り。目指す小屋が遙か先に小さく見えます。どのパーティも一定のペースでジグをとり小屋を目指します。私達も本日の頑張りどころということで、シールを前へ前へ滑らせ登ります。クトーを使用することもなく約3時間30分登ってビニエット小屋に到着。暖かい食事、毛布、歓談の時間がわたしたちの疲労を癒してくれます。
オートルート、それは長い山旅です。
苦労もあるからこそこの長い山岳スキーの醍醐味や充実感が味わえるのでしょう。
オートルート4日日/ビニエット小屋〜エベックのコル〜ベルトール小屋(3,311 m)
この日の行程はロング。ビニエット小屋からエベックのコルへの登高にかかる前に一旦、スキー滑走。硬い斜面のトラバースをへて、プチパウダーを滑走して氷河のプラトーでシール装着。シール登高でエベックのコルを目指します。視界がイマイチな分、黙々と登ります。
約2時間ほどでコルに到着。ここからクレバスを回避しながら長いスキー滑走です。思い返すと今回の中で一番良いパウダーが味わえた一日で、ゲストさんが声をあげる一コマもある滑走でした。
その後は再び忍耐の登り。ベルトール小屋までの永遠に終わらないと思える登り。休憩をはさみはさみ一歩一歩と足を運び、何とか今回のツアー最後の山小屋、ベルトール小屋の直下に到着。この小屋は、最後に約30 mほどの階段が待っています。ゲストさんも少々怖がってますが、ガイドがロープをつけて確保して登っていただいているので安心です。そんな一面もオートルートの一コマ。一味も二味も緊張する場面が現れるのもオートルートの魅力です。
小屋からの眺望は素晴らしく、窓からはマッターホルン! そして、明日の天候は回復の予報で、ラストはマッターホルンを見ながらの大滑走が約束されました。マッターホルンの写真を撮りまくるゲスト。そして、その他のパーティもこの小屋からの眺望を満喫しています。さぁ、明日が楽しみです。
オートルート最終日/ベルトール小屋〜テートブランシュ(3,724 m)〜マッターホルン一望〜ツェルマット(ゴール!)
最終日の朝。山のシルエットはバッチリ! 一日がはじまります。
青空!氷河!山と岩の稜線!ヨーロッパの山群!! まさに絵にかいたヨーロッパ山岳スキーがここにありました。
最終日のスタートは、テートブランシュまでの穏やかな登り。セラックの脇をロープでつなぎあいながらシールで通過。全員でテートブランシュのピークに立てました。十字架のピークのテートブランシュは喜びで包まれ、記念写真をパチリ。
その後はマッターホルンを見ながら、その懐へ滑り込むような雰囲気です。達成感に包まれてツェルマットへの滑走! そしてゴール!!
おわりに
氷河とコル、そして山小屋をつなぎ、登り、滑走する「ヨーロッパ・オートルート」。それはヨーロッパアルプスの歴史とアルピニズムを体感できる、まさに山岳ツアーであり山旅です。壮大なスケール&ここに根づくスキー文化に脱帽です。何と素晴らしい世界がここにあることでしょう。毎回、その懐の深さに胸が熱くなります。
世界に広がる美しい情景や山岳スキーの魅力を発信、提供できるように、私たちガイドも皆様をガイド&エスコートしていきたいと考え、来期もヨーロッパ・オートルート山岳スキーツアーを企画していきます。
今回、ご参加の皆様、有難うございました。そして来年はこの記事を読んでくださっている貴方も一緒に、このオートルートを踏破しましょう!
————-
〇ツアー情報
ヨーロッパ・アルプス(フランス&スイス)
ツアーの詳細はこちら→
こんなツアーもお好きかも
スキー
山の旅