旅の報告(2016年4月)
ヨーロッパ・アルプス
憧れのオートルート踏破/シャモニー〜ツェルマット11日間
2016年の4月(4/1発)、ヨーロッパ・アルプスのツアースキー「オートルート」を山岳ガイド同行で踏破する11日間のツアーを催行しました。
その参加者の方(70代/女性)から写真とレポートをいただいたのでご紹介させていただきます。
はじめに
今年の2月のこと、10年間育ててもらっている山岳ガイドさんから「○○ちゃん、スキーうまくなったね。オートルート行こう!」と誘われました。ゲレンデスキーの会に入って3シーズン、指導員さん達の学習会とお手本の滑りのおかげかもしれません。
ゲレンデスキーの会では少なくない方々から「海外スキーに行った」と聞いて驚いていました。私には「飛行機に乗ってスキー」は考えられませんでしたが、山岳ガイドさんの声に誘われるまま、今回の海外のツアースキーへの参加を決断しました。
オートルートに向けて出発!
4/1の夜、飛行機のエンジントラブルで出発が遅れて始まった今回の旅。1日遅れで着いたジュネーブ空港では、参加者1名のスキーバックが出てこなくて、シャモニーでスキーをレンタルしたり、小物を買い物するなどハプニング続きのスタート。コースも1日分をカットして5日間での縦走となりました。ちなみに、荒天時はエスケープルートで近くの町に避難が可能なコースです。
出発から3日目の朝。シャモニーのホテルから車で送られ、スキー場のロープウエーを3本乗り継ぎ、突然 3,000 m の地点にいる私。そして、圧雪されたゲレンデやパウダーを滑るのではなく、反対のスイス側からの強風の中、カリカリの斜面の滑りから縦走のスタートです。感情抜きで皆について行くしかない、5日分の真っ白な空間です。
滑ったら、今度はスキー板の裏にシールを張って歩きモードの身支度をして、先のコルや峠に向かって山や氷河を登ります。そして、登りつめたらシールをはがして滑りモードに変更。スキーの金具、靴、衣類を仕度して氷河を滑り下ります。
初日は滑りが4回、登りが3回。休憩はなく、作業しながら水を飲み、写真を撮っていると行動食を食べる時間がないような1日でした。そして、ようやく最初の山小屋に到着。ちなみに、今回はゲスト3人に山岳ガイド2名の贅沢なツアーでした。
私には無理ないでたちの 3,000 m?
今回の私のザックの重量は 9 kg。シャベル、3 m の折りたたみ棒、10本爪アイゼン、日数分の昼食、水、ヘッドランプ、山小屋泊の時のダウンウエア上下、他・・。ザックには外づけピッケル、腰にはビーコン、ハーネス、カラビナ4ヶ、スキーアイゼンをぶらさげています。急斜面のトラバースや登りのキックターンはスキーアイゼンなしでは滑り落ちて登れません。
そして、両足にスキー、シール、アイゼンで 6 kg。足も背中も重すぎてへっとへと。後半、一部をガイドさんに持ってもらうことになり、達成感より悲しみが残りました。でも、ハーネスはクレバスに落ちたり濃霧の時、そして岩塔に建つ山小屋入口への急なハシゴを登る時など、ガイドさんとザイルをつなぐ必携品なのです。
4〜6日目/つらい登り
朝、山小屋から滑りでスタート。その後の朝一番の登りはきついです。でも、滑りになると足にしっかり力が入ります。氷河の上には 5 cm ほど雪がのっていて「ヤッホー!」と声がでる楽しさ。でも滑った分を次の小屋まで登るのが、またつらい。
5日目の2度目の登りは標高差 930 m を4時間15分、6日目の登りは 771 m を5時間。へっとへと。毎日6時間〜8時間半の行動です。
山小屋に近づくほど登りは急になります。腹式呼吸を心がけますが、スキー板のテンポとずれて横隔膜がよじれそう。止まって腹式呼吸を5~6回していると「止まるな!」「気持を強く!」とガイドさんから叱咤(激励?)が飛んできます。遅れついでに写真を撮ってるのがバレバレですが、撮らなければ損をする見事な光景なのも確かです。
小屋から見える光景は青く輝く氷河だったり、黒い岩と雪の岩峰群だったり、その間を流れる白い氷河の数々であったり。今までは写真で見るだけだった世界が目の前に広がります。そして、その向こうにマッターホルンが小さく夕日に輝き始めました。
最終日/マッターホルンに向かってロング滑り
3,200 mから 3,710 m の山頂までの登りはつらかったです。酸素が薄い。なだれの跡を何ヵ所か横切り、クレバス帯では「10 m 以上、間をあけて!」。どのグループも一本のトレースをはずれないで登ります。そして、ついに十字架の立つ3,710 m の山の頂に到着。平らな景色を見て、すべての登りが終わった安ど感は忘れられません。眼前には 4,477 m のマッターホルンが目の前に。でも、見慣れた山の裏側からの対面なので、写真と形が違う!
皆で写真を撮りあって、滑りモードに身支度してマッターホルンをめざして氷河を Go !
途中に超急斜面の岩場があり、ガイド氏のたらしてくれた 40 mのザイルに沿って半歩づつの横歩き下りは緊張でしたが、とにかく進むしかないので恐怖感はまったくなかったです。
そして、さらにマッターホルンに近づき、山の裾を左に巻きながら氷河を滑る、ツェルマットまでの標高差 2,090 m の滑りは本当に楽しかったです。
写真を見ると美しさ!
こうしてメモを見ると、つらい、つらいの連呼でしたが、3,000 m を越えても高度障害はなく、山小屋ではグルメな夕食が美味しく、いっぱい撮った写真は「自分が本当にこんな所に行ったの!」と信じられない光景です。行ってよかったです。
この歳で初めての、そしてもうありえない体験でした。
私の場合、山の経験がなかったので技術の習得に10年かかりました。今は、平和な所だけを滑っていたい心境でもあります。
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ヨーロッパ・アルプス(フランス&スイス)
〇 憧れのオートルート踏破/シャモニー〜ツェルマット11日間
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